こんにちは。
柴原史佳です。
秋の週末連休が続いておりますが、皆様は行楽シーズンをどのように楽しまれているでしょうか。
夏の暑さもやっと過ぎ去り、過ごしやすい季節になりました。
そして、いよいよブドウも収穫の時期をむかえました。
日本各地のぶどう園やワイナリーで、続々と収穫が行われています。
私も先日、ワイン用ブドウの収穫のお手伝いへ行ってきました。
今回は収穫の様子をお話したいと思います。
鈴なりの宝物
お手伝いに参加させていただいたのは、長野県塩尻市のブドウ畑。
日本ワインにおけるメルローの名産地「桔梗ヶ原」として、有名です。
夏の日照時間は大変多く、ブドウ、そしてワイン造りにも適した地域です。
以前春先にブドウの花が咲き、小さな緑のブドウの赤ちゃんを見たときから、いつか収穫作業をお手伝いしてみたいと思っていました。
秋をむかえた小さな赤ちゃんブドウ達は、すっかり見事なブドウに成長していました。
この鈴なりのブドウ達。
燦々と降り注ぐ太陽の光もあって、キラキラと輝き、まるで西洋の絵画の中に入ったような景色でした。
163㎝の私なら、膝を少しおって腰をかがめながら歩く高さにブドウ棚があり、一面ブドウが実をなしています。
こちらは、黒ブドウの「コンコード」。
長野県の赤ワイン品種では生産量1位となる、赤いベリーやキャンディのような香りやテイストを持つ、チャーミングなワインとなるブドウです。
このブドウ達を一つ一つ手作業で丁寧に、とにかくとっていきます。
私も不慣れながら、長靴やエプロン、キャップに首にタオルをかけ収穫スタート。
大きく育ったぶどうは、実がずっしり。
一粒口にすると、甘い果汁が溢れ、中にはしっかりとした酸を持つ種。
畑中に漂うコンコードの香りが、お口の中へと広がります。
ワイン用のブドウは生食用に比べて甘くないと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそれにも勝る糖度=甘みを持っています。
この糖分が酵母のエサとなり、アルコールに変わることで、ワインになります。(アルコール発酵)
私はカゴをひきながら作業しましたが、このスタイルが本来はベストです。
首からカゴを下げることで、ブドウの落下も防止出来ます。
また、それぞれの房の良し悪しも選抜しながら収穫できます。(選果)
ただ、ブドウがずっしりと重いので首への負担は相当なものに。
そして、とったブドウはさらに一房一房選果し確認して、ワイン用ブドウとして運ばれていきます。
愛情をたっぷり受けて育ったブドウは、鈴なりの宝物のように見えました。
ブドウの木の下で
ひたすら収穫作業をしていく間の楽しみの一つ、お昼ご飯。
私も収穫されている皆さんのお昼ご飯に、ご一緒させていただきました。
「お昼にしましょう。」
の呼びかけで、みんなで集まってお昼ご飯のセッティング。
一緒に「いただきます。」して、お弁当をいただきました。
いろんな会話をしながら、ブドウの木の下で笑いながらいただくお弁当は、格別の美味しさでした。
皆さんとの記念写真。
本当にあたたかくて、優しくて、ブドウが大好きな素敵な皆さん。
「ブドウが大好き。私はご飯よりもブドウが好き。」
と、80歳を越えた女性もにこにこブドウの選果作業をされていました。
収穫作業は大変だけど、ブドウ農家さんも、お手伝いにいらっしゃる皆さんも、ブドウへの想いや愛情に溢れていて、満ち足りた気分に包まれていました。
食後のデザート、そしてお茶の時間もかかせないのは、もちろんぶどう。
ワイン用ぶどう畑の向こうから、とれたての(左から)巨峰・シャインマスカット・長野パープル。
ブドウ畑のブドウ棚の下で食べるぶどうの美味しいこと。
忘れられないぶどうの味になりました。
ダメージを受けても
翌日は畑をかえ、白ブドウの「ナイアガラ」の畑へ行きました。
ナイアガラは、甘い香り味わいの高い品種で、ご存知の方も多いかと思います。
お天気はこの日も快晴。
またしても美しいブドウ畑。
でも、離れていると気がつかないのですが、少し近づくとコンコードとの違いにすぐに気がつきました。
美しいグリーンの房の実に混じる茶色い実。
実が裂けてしまったり、朽ちてしまった状況になっていました。
今年の夏は非常に暑く雨も少なく、ブドウにはとても良い気候だったそうです。
途中までは。
しかし、収穫前に台風と長雨が続き、乾いていた木が水分を急激に吸収してしまい、こうした実のダメージになってしまったそうです。
ブドウ農家さんによっては、台風の雨風でブドウ棚自体が倒れてしまったところもあったそうです。
結果、強くはない品種が大きくダメージを受けてしまいました。
お世話にこたえて一生懸命大きくなったブドウですが、自然には抗えないのです。
それでも収穫していきますが、実がポロポロと落ちやすくなっているので、さらに丁寧にとり、一房ずつ、ダメージを受けた実をとりながら収穫します。
房によっては、ほぼ健全な実がない状態になるものも。
通常の収穫よりも収量は減り、時間や手間は倍以上になります。
何より、ここまで成長したブドウをはじくのは、胸が痛みました。
プロフェッショナルな農家さんでさえ、
「自然にはかなわない。」
とおっしゃられているのを伺い、栽培の難しさを改めて感じ入りました。
それでも良いブドウ、さらに良いワインのために労力と愛情を惜しまない姿に、私も学ばせていただくことが本当に多かったです。
私がお手伝いさせていただいたのはわずかですが、農家さんはこれが毎日、約1ヶ月続くそうです。
収穫は不自然な態勢になりがちで、労力もたくさん要します。
たくさんの想いを受けて育ったブドウは、宝石よりも輝いて見えて、愛おしかったです。
ブドウの晴れ舞台のような貴重な収穫に携わらせていただけたことに感謝するのと同時に、誰かを癒してくれる美味しいワインになってほしいなと思いました。
ワインのどこか一片を切り取ると、趣向品であったり贅沢な物になってしまうかもしれませんが、バックボーンを少し知ることで、愛情をたっぷり受けた身近な愛おしい物に感じてもらえたら。
ますます美味しく楽しんでいただけるのではないでしょうか。
この時期は、いつもの乾杯にプラス、素晴らしい収穫に乾杯を。