第22回手塚治虫文化賞短編賞受賞!「大家さんと僕」矢部太郎さんインタビュー

第22回手塚治虫文化賞短編賞受賞!「大家さんと僕」矢部太郎さんインタビュー

お笑いコンビ カラテカの矢部太郎さんが昨年10月に初めて刊行した漫画『大家さんと僕』(新潮社1080円)が累計発行部数20万部を突破しました。

今回、COLORSでは矢部さんのインタビューをさせて頂きました。
『大家さんと僕』を書かれた経緯など、普段聞けないお話をたくさん聞くことが出来ました。

C:漫画はいつ頃から書かれたのでしょうか?

矢部さん:漫画は初めて書いたんですけど、絵を描くのは以前から好きで頼まれたら描いていました。
自分から何か作品を、ということは無かったのですが身近な芸人の先輩や相方から頼まれて描いたことはあります。

C:では今回の作品を書かれるにあたっても、知人の方の勧めがあったのでしょうか?

矢部さん:はい、相方の入江くんもそうですし、直接的ではないですが、倉科遼先生っていう漫画原作者の方がいて『女帝』や『夜王』という作品があるんですけど、その方から書いてみたら?と勧められました。

C:そのお話があった時に、大家さんとの日常を書くことは直ぐに浮かんだのでしょうか?

矢部さん:大家さんとお茶していた時に偶然、倉科先生にお会いして、大家さんとの関係性が素敵だから作品にしたら?とお示ししてもらってその時からこういうものを書こうと思っていたんです。

C:本の帯にコメントを寄せている著名人の方々はお知り合いなのでしょうか?

矢部さん:平愛梨ちゃんは、仲が良くて天野会と言って天野さんのご自宅で天野さんの手料理を食べるメンバーです。、本を出すにあたって、出版社の担当の方が連載分をまとめた冊子を作ってくださって、書店などに配って販促活動をして頂いたんですね。
それを何冊か頂いていたので愛梨ちゃんにあげたんです。
そうしたら、読んでくれた感想を長文でくれて、帯に書いてあるような内容でした。
単行本を出すにあたって、誰に頼もうかとなった時に愛梨ちゃんの話をしていたので編集者の方が頼んでくれたんです。

他の2人は直接の面識はないんですけど、東村先生の漫画がすごい好きで、帯頼めたらな、と思っていたんです。一回お願いしたら「弟子の人以外帯は書かない」っていうことでお断りされたのですが、その後読んでくれてこれなら書いてもいいですと書いてくれました。

もう1人能町みね子さんというエッセイストの方がいらして、『お家賃ですけど』、という作品を出版されています。
能町さんが古いアパートに住んでいて大家さんとの交流を描いた本で、その本を読んだ時に「今の僕と似ているなぁ」と。
古い建物と昔からいる大家さんという愛が溢れていて、良い本だなぁと思ったので、ぜひ能町さんにも読んでいただけたらと思ったんです。

C:面白そうです、ぜひ読んでみます!
帯の東村さんの言葉の通り、エッセイ漫画としてエッセイ、文章の部分がとてもお上手だなぁと感じたのですが、読書は普段からされているのでしょうか?

矢部さん:はい、読みます。

C:どのような作品が好きですか?又は読まれましたか?

矢部さん:漫画でいうと、自分の書いたようなテイストのものが好きで良く読みます。
小説も読みますけど、小説はこういうテイストのものではないかもしれません。
実験的というか、ポストモダン的なものが好きです。

C:最近読まれたものは何かありますか?

矢部さん:最近ですと、町田康さんの『湖畔の愛』を読みました。
町田康さんは好きで、買おうと思っていたんですけど、新潮社から発売されていて、僕の担当の方が偶然近所に住んでいるので、家のポストに入れてくださっていて。
郵送とかだと間に合わなくて先に僕が買っちゃうかもしれないからわざわざポストに入れてくれたみたいなんです。
すごく面白かったですね。
町田康さんは、関西の方なんですけど、新喜劇も好きみたいで、新喜劇っぽいやり取りで、進むんです。
今回は特に新喜劇なんじゃないかっていう書き方で、ホテルのフロントっていう場面設定だけなんです。
新喜劇ってセットがひとつで話が進むのですが本当にそんな感じです。
変なおじいさんが出てきたり、新喜劇を町田康さんが解釈しているような気がしていて面白いなと思います。
(間)寛平さんや辻本(茂雄)さんみたいなおじいさんが出てくるんですよね、実際に。
すごく面白いなと。

C:好きな作家さんなど熱い想いをお聞かせくださったので、また矢部さんの作品に戻りますが、昨今では近隣住民との関わり合い方や、子どもは知らない人と話したら危ないと言われている。
そういった点については、何か矢部さんの考えはありますか?

矢部さん:それは、それぞれの考え方や想いというのがありますから、良いんではないでしょうか。

C:そういったことは抜きで、矢部さんと大家さんに流れた間柄ということでしょうか?

矢部さん:そうですね。
別にこっちが正しいとも思わないし、それぞれの暮らし方があるんじゃないかと思います。

C:昔は隣近所から貰い物をしたり、関わり合いが強かったように感じますが今は薄くなって来ています。
矢部さん自身も最初は大家さんとの距離感に悩まれたりはしなかったのでしょうか?

矢部さん:それはありました。
一人暮らしの良さといいますか、都会の良さというか、一人暮らしってお金を払って自由を買っているので、最初は戸惑いました。

C:でもだんだんと大家さんのお人柄からも距離が近くなられたんですね。

矢部さん:そうですね。

C:今の若者はやはり近所付き合いがあった時代をあまり知らないですし、そういう方から見ると、矢部さんと大家さんの間柄は非常に斬新に感じるのではないかと思うのですが。

矢部さん:そうですね。
でも本を読まれた方からは、「昔こういう大家さんがいました」とか、「今私も似ている大家さんがいます」などのコメントを頂くので、今もあるのではないでしょうか。

C:では、最後になりますが、こちらの本をこれからどんな方に読んでもらいたいですか?

矢部さん:どんな人に読んでもらいたいですかねぇ。
大体、もう読んでもらいたい人には読んでもらっちゃった(笑)
読みたい人に読んでもらいたい、という思いはあります。
僕は少数向けに書いたと言いますか、漫画の中でもこういう漫画って、読む方は少数だと思うんですよね。
なので、読んだ方が気に入ってくれたら良いなって思います。

ライター感想

インタビューから、自身の作品以外の本も勧めて下さったり、大家さんが矢部さんを気にかけ、本の中のようなやり取りが行われるのも納得のとても優しくお人柄でした。
そのほんわかした温かさが、作品のイラストにも現れています。
エッセイ・イラストと穏やかな2人の空気感が、ストレス社会の中、忙しく生きる現代人の心を掴み、大ヒットとなっているのだと思います。
最後の撮影で、控室に置かれたホワイトボードに、COLORSのためだけにイラストを特別に書いてくださいました!
実際に描かれている姿は貴重です。
「普段はパソコンで書いているので、実際にペンで書くと下手なんです」とは言うものの、ホワイトボードに現れた大家さんと僕は、ほっこり温かく、大家さんの眼鏡の中の目は見えないのに、にっこりと存分な微笑みをされているように感じます。
COLORSさんという言葉も入れて下さいました!
最後も、どこまでも温かい空気で包まれる、矢部さんのお人柄を感じられる取材でした。

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